NO.10「ジャージャー橋」

利根川の支流、千葉県香取市佐原を流れる小野川にかかる樋川橋は「ジャージャー橋」とも呼ばれている。江戸時代、この川をまたいで農業用水を通すため、大きな樋が造られた。その上に板を張り、「樋橋」が誕生したが、両側から水が噴出し滝のようになったという。
小さな川の両岸には、古びた蔵や商家が並ぶ静かな町に、今でも30分おきに小野川の水をくみ上げて、自動装置で落水する音が響く。橋を造ったのは、江戸後期に日本全図を完成させた伊能忠敬の一族らしい。橋の前に忠敬の屋敷跡があって、今の佐原があるのは伊能家と『ちゅうけい先生』のおかげと、地元の人は言う。地元の名主だった一族は測量技術に通じ、利根川の利水治水に尽力したらしい。樋橋がいつ出来たのか、正確には分からないが、わずかな傾斜を巧みに利用した送水システムは見事である。先人の熱意を今に伝えようと、昭和になって樋水を再開した。小江戸情緒を残す町のシンボルでもあり、橋のたもとから水郷めぐりの舟が出ている。

柳の芽 先人の偉業 伝える落水や

新緑や 水郷めぐり いざ出発