NO.11原尻の滝

新聞の日曜版で「風景考」という連載を始めるに当って、1回目の候補地探しで大分県豊後大野市緒方町にある江戸時代に作られたと言う用水路を見に出かけた。見事な水路で猶も現役だったが、1回目に取り上げるにはパンチ不足だった。役場でほかにいい所はないかと聞くと「田んぼの真ん中に滝があり、東洋のナイアガラと言われています」と紹介された。滝と言えば山や崖にあるのが普通だが、田んぼの中にあると聞いて、これは珍しいと食指が湧いた。町外れの広々とした田んぼの中を流れる緒方川が突然落ち込み、高さ20㍍、幅120㍍の滝があった。ごうごうと水が落ち、無数の糸を引いて、時にカーテンとなり見事な虹もかかっていた。滝のすぐ上、川の真ん中には鳥居が立ち、祭りの日には裸の男たちが対岸のお宮まで神輿を担ぎ上げると言う。阿蘇の大噴火で生れた滝で、今は滝を中心に年間様々な行事が開かれ、緒方川の臍であると共に、町の臍であるかもしれない。地方へ行くと、まだまだ新たな発見があるのがうれしい。映画の寅さんシリーズもそんな残したい風景がふんだんに出てくる。

春麗 田んぼの中の ナイアガラ